2012年8月13日月曜日

三谷文楽 其礼成心中☆☆☆☆☆

2012年8月13日 三谷文楽 其礼成心中☆☆☆☆☆ 於 パルコ劇場

三谷幸喜作演出の文楽.進撃用の舞台ですから,当然床は無い.舞台装置の上のほうに床を作り,スライディングステージで太夫と三味線が交替する.
台詞は「パトロール」だの「アドバイス」だの現代語.床を匍匐前進するわ飛び跳ねるわのドリフのような動き,面白かった.
まずは黒子姿で自分の顔の人形を持った三谷幸喜が「上演中の諸注意」をお客さんをいじりながら説明.
近松門左衛門の「曽根崎心中」が大当たりをしたため,露天神の森は心中のメッカになってしまう.天神近くで店を出している饅頭屋は客足が落ちて大迷惑.店主は夜な夜な森をパトロールしては心中しそうなカップルを見つけて追い返す.
油屋の手代と店主の娘が心中しそうになるが饅頭屋の女将が「のれん分けされるぐらい働かないと娘を嫁に貰うのは無理,お嬢さんも親の決めた許嫁と結婚なさい,いつ亭主が餅を喉に詰まらせて死ぬか解らない」と追い返し,この時に「名物曽根崎饅頭」と「相談承ります.曽根崎の母」でボッタクリ商売を始め大当たり.
ところが,近松が「心中天網島」を書いたから,曽根崎は下火になり,借金まみれに.変わって網島が有名になる.饅頭屋は近松に文句言いに行くが,其れこそお門違い「それなりに面白い心中話があれば書いてやる」とつれない.
そのうち網島の天ぷら屋に偵察に行っていた饅頭屋の娘は天ぷら屋の息子といい仲に.「添い遂げなければ心中を」というと「いやいや心中は美男美女にこそ似つかわしい」となんたる親.結局地を這い,かけずり回ってダダをこねる娘では無く,我ら夫婦が心中しようと言うことで淀川に飛び込む.しかし,あまりの苦しさに心中を止めると,呼び止める声が.油屋の手代と店主の娘.手代はのれん分けされ,娘は亭主が餅を詰まらせて呆気なく亡くなり晴れて夫婦になれた.これはほんのお礼と言って大枚を.これで借金が返せると安心した夫婦は,我に返って空腹を覚え,懐の饅頭を食べるが,水を吸って喰えた物では亡い.しかし,女将は「心中に水を差す曽根崎の水饅頭として売りだそう」と言う.
最後は人形と人形遣い総ぶれでのカーテンコール.楽しい二時間でした.
歌舞伎も文楽も,娯楽の部分があります.娯楽に徹した歌舞伎はコクーンや平成中村座で見られます.文楽ではテンペストなんかは結構娯楽色が強かった.
この作品は「あり得ないストーリー」「奇想天外は展開」まさに典型的な文楽作品だと思います.字幕が無くても台詞はよく分かりました.
パルコ劇場の定式幕は,歌舞伎座と同じ森田座式でした.国立劇場とは並びが違います.
国立劇場か,国立文楽劇場で見たい物です.

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